止まない雨はない。
とは良く言うが、実際に土砂降り豪雨の最中に、それをどこまで強く信じることが出来るだろう。
７月３日、本城陸上競技場を覆った雨雲は激しい雷雨をもたらした。
本当に止むのか？
ゲームは中止にならないのか？
そこに集まった両チームのファン、サポーターはその天気の移り変わりに焦燥感を禁じ得なかったハズだ。
しかし、その中において、全くブレることなく、陽が射すことを信じ続けた男がいた。
ギラヴァンツ北九州、背番号９、原一樹。
彼が信じていたのは、その日の雨上がりだけではなかった。
なかなか勝ちが拾えず、一時は最下位にまで低迷したギラヴァンツ北九州において、いつかその雨雲が晴れ、必ず光が差すことを誰よりも信じた選手の１人だ。
今季は開幕戦から数試合を怪我で出遅れたが、決して焦ることはなかった。
復帰第一戦から、強烈なフリーキックを相手ゴールに叩きこみ、そこからは驚異的なペースでゴールを量産していった。
ただ、得点をしても勝てない試合が続いた。
そんな中で彼は言った。
「２点取れば、勝てたハズ」
鋭い眼光でゴールを狙うその様は、まるで飢えた虎が獲物に襲いかかるかのようでもあった。
やがて有言実行の日が訪れる。
雷雨の過ぎ去った、７月３日の本城陸上競技場。
シーズン前半の最終戦となる大切なホームゲームは、東京ヴェルディとの一戦だった。
前半に１点のビハインドで折り返したギラヴァンツ北九州は、後半54分、原一樹が今季8点目を叩きこみ、同点に追いつく。
そしてその２分後、本城の興奮も冷めやらぬうちに、自らが追加点を奪うことで逆転に成功する。
試合前の雷鳴よりも大きな歓声が、本城を覆った。
猛虎が、吠えた。
ゴール裏に駆け込んだ原一樹をサポーターの歓喜が包み込んだ。
公言どおりの、２得点による、逆転勝利だった。
思い起こせば、彼のサッカー人生は常に有言実行で成り立っている。
出身地の強豪校、市立船橋でエースナンバー１０を背負い、日本一になることを夢見た中学時代。
しかしサッカー推薦は受けられず、必死で勉強に励み一般入試で市立船橋に合格。
３年かけてチャンスをものにし、見事背番号１０を背負った。
その高校で日本一の夢を叶え、プロになることを夢見た高校時代。
それもすぐには叶わず、大学の４年間に活躍を続け、結果を出し続けることでプロサッカー選手という夢を叶えた。
有言実行とは、いつでも諦めない心が成す。
いま、彼はギラヴァンツに来てから語り続ける夢がある。
「シーズン２０得点とること」
この試合の後に原一樹は語った。
「ピッチに立ってる選手だけでは、なかなかゲームっていうのはモノにできないと僕は思っているので。僕はたくさんの人の力っていうのは感じますし、諦めずに応援してくれる人がいるからこそ僕達は進み続けられます」
我々の応援は、確実に彼の力になっている。
我々の声援が、猛虎を駆り立てる。
さぁ、一緒に目撃しよう。
原一樹の有言実行、その待望の瞬間をー
